曽根富美子先生の「親なるものたち断崖」は本当にすごい話でした。道子、松恵、梅、武子…この四人の少女たち、そして2巻ではお梅の娘・道生。様々な女性たちのドラマがぎゅっと凝縮された漫画でした。最初は、戦時中の遊郭ものかな、と思っていたんです。遊郭ものの漫画って、わりと華やかなものも多いですよね。しかしそこはさすが曽根富美子先生。「親なるものたち断崖」はかなりリアルに、辛く目を背けたくなるような女たちの生き様を描いていました。それまで、観光地やのどかな土地、食べ物がおいしいよね?なんて思っていた北海道。室蘭に秘められていた悲しい過去に、びっくりしてしまいました。親なるもの断崖曽根富美子室蘭の幕西遊郭という名前も「親なる断崖」の中ではじめて知りました。戦時中は全国各地
でたくさんの命が失われ、たくさんの人々が犠牲になったのだろうと思うと本当に胸が痛い。子供がらみのエピソードは、特に辛いんです。曽根富美子先生の描き方がリアルでもあるんですが、死産した梅や、我が子をすぐ殺されてしまった武子のシーンは読んでいて息が詰まるような苦しささえ感じるような漫画でした。
だからこそ、ラストの道生がまっすぐ前を向いているシーン…しかも子供達の手を引いて…このシーンは希望以外の何者でもありません。命をつなぐ、時代をつなぐ…というメッセージが込められているようで、本当に美しいシーンだと思います。道生が素敵な伴侶に恵まれて結婚し、子供をもうけ、幸せになって本当によかった。この終わり方が救いがあって、本当によかったと思います。このシーンがあるからこそ、私もばっちゃのように、お梅のことをこう思います。「梅は不幸じゃない。道生を産んだんだから、世界一幸せな母親だ」と。